実り多い幸せな人生を送るために

真に人間らしく実り多い,生きる喜びや希望に満ちた幸せな人生を送るために

 自戒の念を込め,どのようにすれば真に人間らしく(自分にとってのみならず他者や社会にとっても有益な),生きる喜びや希望に満ちた幸せな人生を送れるのかということについて,あるいは,実り多い幸せな人生を送ることは誰にでも可能であるということについて,様々な名言などをヒントにしつつ(それらに含まれている人生の真理を私なりに理解しつつ),できる限り分かりやすく筋道立てて説明していきたいと思います。皆様が実り多い幸せな人生を送る上において,多少なりともお役に立てれば幸いです。               皆様の人生が,実り多い幸せなものでありますように!

(9)④私たちの心には生まれ付き,全体のバランスを取ろうとする特性が備わっている。

 世の中の否定的な側面ばかりに目を向ける習慣を身に付けてしまった人が,世の中の否定的な側面のみならず,世の中の肯定的な側面にも広く公平に目を向けられるようになるということは,「言うは易(やす)く行うは難し」であるかも知れませんが,私たちの心には生まれ付き,全体のバランスを保とうとする,あるいは,全体のバランスを回復させようとする特性,例えば,偏った不公平なものの見方や考え方や生き方を,よりバランスの取れた公平なものに変えようとする「自然治癒力」のようなものが備わっているのではないでしょうか(バランスを取ろうする余り,しばしば振り子が反対側に振れ過ぎてしまうことがありますので,その点には留意が必要ですが。)。「誰も信じられない。」と,他者に対して心を閉ざしている人の心の中にも,信じることのできる他者に巡り会いたいという気持ちはきっと残されていると思いますし,「生きていたって,いいことなんか何もない。」と,人生を悲観している人の心の中にも,人生に対する希望を完全には失いたくないという気持ちはきっと残されていると思いますし,「自分なんかどうなったって構わない。」と,自分を粗末に扱っている人の心の中にも,自分をこれ以上粗末に扱いたくないという気持ちはきっと残されていると思います。大切なことは,そのような気持ちをいかに呼び覚まし,強化していくか,ということなのではないでしょうか。

 

 

【実り多い幸せな人生に関する名言等 1023】

「贅沢品や娯楽品に関するかぎり,第一級の賢人たちは,貧しい人よりもさらに簡素でつましい暮らしをいつもしてきた。・・・外面的な富の点では誰よりも貧しく,内面の富では誰よりも豊かな人びとだった。」(『ウォールデン』,ヘンリー・D・ソロー,酒本雅之訳,筑摩書房

 

○物質的(経済的)な豊かさと心の豊かさは,まったく別のことです。物質的な豊かさを求めれば求めるほど,心は貧しくなるものです。なぜなら,物質的な豊かさには限りがなく,求めれば求めるほど満足することが難しくなり,たとえどれだけ多くの物を手に入れたとしても不満ばかりが募っていくからです。実際,私たちが現在暮らしているこの社会は,物質的には人類史上最も豊かな社会と言えますが,私たちの心は,果たして昔の人たちの心に比べて豊かになったと言えるでしょうか。むしろ,貧しくなっているのではないでしょうか。もちろん,社会から貧困がなくなることは良いことですが,これだけ社会が物質的に豊かになったのですから,私たちはそろそろ,物質的な豊かさをある程度は犠牲にしてでも,心の豊かさを追い求める方向に舵(かじ)を切る(取る)べきなのではないでしょうか。自分の欲望に自分の意志でブレーキを掛けることによって,たとえそれが必要最小限の物であったとしても,自分が持っている物だけで満足できるように(簡素でつましい暮らしにさえ生きる喜びや幸せを無限に見いだせるように)なりたいものです。(4)(6)(14)(21)関連

 

 

(9)③老いることや,病気になることや,死ぬことにさえ,肯定的な側面はある。

 何事にも一長一短があり,一般的には否定的なものとして捉えられがちな,老いることや病気になることや死ぬことにさえ,肯定的な側面はあります。実際,私たちは,老いることによって,欲望に肥大化が自然に抑えられるようになり,足るを知ること(自分の人生に満足すること)がより容易になりますし,財産や地位や権力や名声などに対する執着からもある程度は自然に解放され(他者と競い合う必要性が低下し),他者と仲良く助け合ったり,生きる喜びや幸せを分かち合ったりすることが,より容易になります(願わくは,老人になる前に,自分の欲望に自分の意志でブレーキを掛け,様々な執着から解放されるようになりたいものです。)。最近では,社会の高齢化が大きな問題になっていますが,長生きできるということは本来慶賀すべきことですし,社会が高齢化するにつれて戦争や犯罪は減少する傾向があるとも言われています。また,病気になることによって,健康や命や他者(他者の支えや助け)の有り難さを痛感し,ただ健康でいられるというだけで,あるいは,ただ生きていられるというだけで,心から感謝できるようになりますし,自分や他者の健康や命を粗末に扱うことなく,大切にできるようにもなります(願わくは,病気にならずとも,健康や命や他者の有り難さに気づき,心から感謝できるようになりたいものです。)。人間の致死率は100パーセントであり,私たちはいつか必ず死にますが,死ぬことにさえ肯定的な側面はあります。実際,もし人間が不死身であったとしたら,世の中は人間で溢(あふ)れ返ってしまいますし,新たに人間が誕生する余地がなくなってしまいます。そもそも,死があるからこそ生きる喜びがあり,生きる喜びがあるからこそ私たちは,ただ生きているということにさえ,感謝したり,幸せを感じたりすることができるのではないでしょうか。そして,生きていることそれ自体に感謝したり,幸せを感じたりすることができればこそ,私たちは,たとえどのような逆境にあろうとも,たとえどのような不運に見舞われようとも,生きている限りは幸せな人生を送り続けることが可能になるのではないでしょうか。もっとも,本物の死を体験したことのある人間などいないのですから,死んでからのことは誰にも分からず,死を否定的・悲劇的(悲観的)なものとして捉えること自体が間違っている可能性も否定できませんが。

 

 

【実り多い幸せな人生に関する名言等 1022】

「ほんとうにどんなつらいことでも,それがただしいみちを進む中でのできごとなら,峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつです。」(「銀河鉄道の夜(『童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇』所収),宮沢賢治岩波書店

 

○自分を人間的に成長(成熟)・向上させ続けることによって,自分の可能性を十分に花開かせ,実を結ばせるとともに,多少なりとも他者や社会の役に立ちたいと望むのであれば,自分が本当にやりたいと思える好きなことを見つけ,そこに自分が信じることのできる自分なりの目標や理想を見いだし,その目標や理想に向かって自分が進むべき道を自分の歩幅で一歩ずつ前進し続けることこそが重要なのではないでしょうか。自分が本当にやりたいと思える好きなことなら,困難や苦労に耐えて努力し続けることが可能でしょうし,自分なりの目標や理想が定まっているなら,努力する方向を間違えてしまうようなこと(その結果,すべての努力が徒労に終わってしまうようなこと)もないと思います。たった一度きりの人生に大きな悔いを残さないようにするためにも,くれぐれも,他者との勝ち負けや他者からの評価などに気を散らして自分が本当にやりたいと思える好きなことを見つけ損なってしまったり,自分が信じる目標や理想に向かって前進し続けることを先送りしてしまったり(後回しにしてしまったり)しないようにしたいものです。(前書き)(11)(13)(14)(20)関連

 

 

(9)②世の中の肯定的な側面にこそ積極的かつ意識的に目を向ける習慣を身に付けること。

 生き物には生来,危険を回避して生き延びるべく,自分の生存を脅かすような出来事や情報に注意や関心を向けやすく,それらを記憶にとどめやすい傾向があることに加え,災害や事件や事故などのネガティブな出来事や情報に焦点を当てて報道する傾向のあるマスメディアの影響などもあり,私たちは総じて,世の中の否定的な側面ばかりに目を向けやすく,世の中を否定的なものとして捉えてしまいがちです。しかし,改めて言うまでもなく,何事にも一長一短(一得一失・一利一害)があるのであり,世の中にも,否定的な側面だけではなく,肯定的な側面があります。実際,人の道に外れた悪行にさえ,「反面教師」という側面があります。肯定的な側面に目を向けようとせず,否定的な側面ばかりに目を向けるのは,否定的な側面に目を向けようとせず,肯定的な側面ばかりに目を向けるのと同じく,余りにも偏った不公平なものの見方と言えるのではないでしょうか。私たちは,放って置けおけば世の中の否定的な側面ばかりに目を向けてしまう傾向があるわけですから,世の中の肯定的な側面にこそ積極的かつ意識的に目を向ける習慣を身に付ける必要があるのではないでしょうか。

 

 

【実り多い幸せな人生に関する名言等 1021】

「世界には戦争や災害で学ぶ機会そのものを奪われている子どもたちが無数にいます。他のどんなことよりも教育を受ける機会を切望している数億の子どもたちが世界中に存在することを知らない子どもたちだけが「学ぶことに何の意味があるんですか?」というような問いを口にすることができる。」(『下流志向』,内田樹講談社

 

○私たちが暮らしている社会は,人類史上最も豊かで安全で便利な社会と言えます。私たちには,そのような恵まれた社会で暮らしているという自覚が,余りにも不足しているのではないでしょうか。そのような恵まれた社会で暮らせることの有り難さに気づき,感謝する気持ちを忘れさえしなければ,自分の人生に不平不満ばかりを募らせては,自分は不幸であるなどと思い込んでしまうようなことは,きっとなくなるはずです。たとえどのような逆境にあろうとも,たとえどのような不運に見舞われようとも,常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送れるようになるためにも,自分が今ここでこうして生きていられることに有り難さ(このような人類史上最も豊かで安全で便利な社会で暮らせることの有り難さのみならず,私たちの命を守り,私たちが生きることを可能にしてくれている大自然の神秘的とさえ言える精妙な仕組みや働きの有り難さや,私たちの人生を成り立たせてくれている数知れぬ他者の直接的又は間接的な支えや助けの有り難さなども含め。)に常に深く思いを致し,心から感謝する習慣を身に付けたいものです。(1)(2)(4)(6)(11)関連

 

 

(9)①世の中の否定的な側面のみならず,肯定的な側面にも広く公平に目を向けること。

 恵まれない境遇に生まれ育ち,現在も恵まれない境遇に身を置くなどして,世の中の否定的な側面ばかりに目を向けるようになってしまった人が,自分が幸せであることに気づけるようになるためには,まずは,世の中の否定的な側面のみならず,世の中の肯定的な側面にも広く公平に目を向けられるようになる必要があるのではないでしょうか。そして,自分を大切にし,他者に対して心を開き,人生に明るい展望を持てるようになることで,いま自分の目の前にある幸せに気づいたり,自分の人生に無限と言ってもいいほどの生きる喜びや希望を見いだしたり,自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに深く思いを致し,心から感謝したりできるようになる必要があるのではないでしょうか。