私たちは,自分の人生に満足できていないからこそ,また,自分が進むべき道(自分が本当に信じることのできる自分なりの目標や理想)が定まっていないからこそ,他者の暮らし向きや他者の動向が気になるのであり,自分と他者を比較しては他者との勝ち負けにこだわり,他者と敵対するようになってしまうのではないでしょうか(他者に対してマウントを取ろうとするのは,自信の現れと言うよりは,むしろ,自信のなさの現れと言えるのではないでしょうか。本当に自信のある人は,他者との勝ち負けになどに余りこだわらないでしょうし,他者に対してマウントを取ることより,自分が信じる目標や理想に向かって自分が進むべき道を邁進(まいしん)することにこそ,限りある大切な時間やエネルギーを使おうとするのではないでしょうか。)。そして,自分は不幸であるなどと思い込んでは(総じて人間は,「隣の芝生は青い」,「隣の花は赤い」,「隣の飯は旨(うま)い」,「内の米の飯より隣の麦飯」,「自分の荷物が一番重い」(中井久夫)と感じがちな生き物です。),他者を妬んたり,自分を哀れんだり,自分が不幸であることを他者のせいにしては他者を恨んだり,逆に,他者との勝負に勝って社会的(世俗的)な成功を収めては,他者を見下したり,おごり高ぶったり,自分が社会的に成功できたことを自分だけの手柄であると勘違いしては(他者の不幸を他者の自己責任であると決め付けては)他者を簡単に切り捨てたりしてしまうのではないでしょうか。