「地上のあらゆる欲しいものが買えても,命や命についての知識,人生にとって本当に大事なものだけは買うことができないお金なんてものが,どうして大事なものだったろう。・・・人生の役にも立たないお金をもうけることに夢中になってきた自分の人生は何と空(むな)しいものだったろう。最後に君は,気がつくに違いない。」(『14歳の君へ』,池田晶子,毎日新聞出版)
○「お金で買えないものなど何もない」と言う人もいますが,本当に価値のある大切なものは,お金では買えないものばかりなのではないでしょうか。例えば,私たちの命,その命を守り,私たちが生きることを可能にしてくれている大自然(人体も含め。)の神秘的とさえ言える精妙な仕組みや働き,私たちの生活を成り立たせてくれている数知れぬ他者の直接的又は間接的な支えや助け,自分が今ここでこうして生きていられることを感謝する気持ち,自分が本当に信じることのできる自分なりの目標や理想,他者との一体感,自分の人生を自分の努力によって主体的に切り開いていこうとする強い意志,曇りのない眼や心の平安,人生の真理などは,お金では買えません。お金があれば必ず手に入るといったものではありませんし,基本的にはお金なんかなくても手に入るものばかりです。本当に価値のある大切なものは決してお金では買えないという事実に気づけないということ,すなわち,お金では買えないものの価値や大切さに気づけないということは,不幸以外の何物でもないと思います。(21)関連