死ぬ瞬間には,誰もがきっと,無欲恬淡(むよくてんたん)・春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)という境地に達し,様々な執着や不平不満などから解放されるのではないでしょうか。そして,曇りのない眼や心の平安を取り戻し,生きているということは,ただ生きているというだけで十分に価値のある幸せなことだったのだと気づき,これまで生きてこれたことや,この世の中に生まれてこれたことに対する感謝の気持ちを新たにするのではないでしょうか。しかし,死ぬ瞬間に気づくのでは遅すぎます。人生は,すなわち,私たちがこの世の中で生きることができるチャンスは,たった一度きりです。その人生が生きる喜びや希望に満ちた幸せなものでなかったとしたら,私たちはいったい何のために生きているのでしょうか。何のためにこの世の中に生まれてきたのでしょうか。人生がただ苦しくてつらいだけでのものであったとしたら,たとえどれだけ長生きできたとしても,生きている甲斐(かい)がありませんし,せっかくこの世の中に生まれてきた甲斐がありません。