「逆境の際の最大の慰めは,思いやりのある心に出会うことだ。(メナンドロス)」(『世界ことわざ名言辞典』,モーリス・マルー編,田辺貞之助監修,島津智編訳,講談社)
○恵まれない境遇に生まれ育ったり,身を置き続けたりすると,人間はどうしても,世の中の否定的な側面にばかり目を向けるようになり,自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに深く思いを致すことができなくなってしまいがちです。そして,挙げ句の果てには,自分は不幸であるなどと思い込むようになってしまいがちです。しかし,そのような自分の苦しさやつらさや悲しさを誰かにしっかり共感してもらえるなら(そのような他者に出会えるなら),いつかは世の中の肯定的な側面にも広く目を向けられるようになり,自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに深く思いを致し,心から感謝できるようになる(ひいては,生きていることそれ自体に幸せを感じられるようになる)可能性は,格段に高まります。私たちと他者は,持ちつ持たれつの相互依存関係,言わば一蓮托生(いちれんたくしょう)の関係にあるわけですから,他者の不幸は「対岸の火事」ではあり得ません。「困った時はお互い様(相身互い)」です。自分だっていつ不運に見舞われ,逆境に身を置き続けるようになるか分からないわけですから,他者の苦しさやつらさや悲しさをしっかり共感できる人間になりたいものです。(5)(16)(19)関連