「それこそが人間にとっての救いでもあり罪でもあるわけですが,正しい生き方をしていない人間は,自分の状況の悲惨さに気づかぬように,われとわが目を曇らせることができるのですよ。」(『クロイツェル・ソナタ』,トルストイ,望月哲男訳,光文社)
○人の道に外れる悪行を繰り返していれば,自分を肯定し続けることが難しくなり,いつしかきっと,自分に嘘(うそ)をつくようになってしまいます。自分に嘘をつくことによって,自分の行動や自分の生き方を正当化するようになってしまいます。しかし,自分に嘘をつけば,次第に自分に対して合わせる顔がなくなり,自分との対面を避け,自分の心の声に耳を閉ざし続けた挙げ句,本当の自分を見失い,自分が生きている意味や,自分がこの世の中に生まれてきた意味が分からなくなってしまうのが落ちですし,最終的には,自分に嘘をつき続けることにも疲れ,やがては自分を否定せざるを得なくなり,自分を嫌い,自分を憎み,自分を粗末に扱うようになってしまうのが落ちです。自分に嘘をつき,本当の自分や生きる意味を見失ってしまったり,自分を粗末に扱うようになってしまったりしないように,是非とも強い意志を持って正しい道を歩み続けたい(正しい道に踏みとどまり続けたい)ものです。(3)(14)