「消費はかつてないほど活発になり,生活の利便性は向上したが,人間が自らの欲望に振り回される姿を見なければならないとすれば,それは無残な光景だと言わざるを得ない。」(『経済成長という病』,平川克美,講談社)
○私たちが,人類史上最も豊かで安全で便利な社会で生活できているのは,先人たちが,その欲望を満たそうと必死に努力してくれたおかげと言えます。しかし,「欲に頂(いただき)なし」と言うように,人間の欲望は,強い意志を持って意識的にブレーキを掛けない限り肥大化する一方であり,社会がどれだけ豊かで安全で便利なものになったとしても,それで満足するということはありません。いつまでたっても心は貧しいままであり,常に不満を抱えながら,自分の欲望に振り回され続けることになってしまいます。欲望の奴隷になることなく,常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送りたいと願うのであれば,必要以上に欲張ることなく,自分の欲望に適切にブレーキを掛けられるようになる必要があるのではないでしょうか。自分の欲望の肥大化に適切にブレーキを掛けられるようになれば,現状で,あるいは,必要最小限の状態でさえ満足できるようになり,今よりずっと心豊かに暮らせるようになるのではないでしょうか。(4)(6)関連