「成る程,己れの世界は狭いものだ,貧しく弱く不完全なものであるが,その不完全なものからひと筋に工夫を凝(こら)すというのが,ものを本当に考える道なのである,生活に即して物を考える唯一つの道なのであります。」(「文学と自分」(『小林秀雄全作品 13』所収),新潮社)
◯人間は,自分の体験や知識に基づいて考えるしかないのである。そして,その狭く偏った体験や知識に基づいて考えながらも独断に陥らないようにするためには,他者からの評価に振り回されることなく他者の言葉に素直に耳を傾けるための工夫や,慢心することなく謙虚に学び続けるための工夫を凝らす必要があるのである。(2020年2月26日)