「本当だったらどこかの誰かが飲み屋で言っているようなことは聞こえてこないはずなのに,ネット社会では聞こえてきて,それでお互いに言い争いになったりする。」(「認知革命はゆっくりと進行した」(『『サピエンス全史』をどう読むか』所収),福岡伸一,河出書房新社)
○私たちには,自分の意見を自由に表明する権利がありますが,そこに,他者を誹謗(ひぼう)中傷したり,罵詈(ばり)雑言を浴びせたりする権利は含まれていないはずです。「口は災いの元」,「天に唾する」,「物は言いよう」などとも言います。不正確な情報に基づいて一方的に他者を否定したり,非難したりするようなことはやめたいものです。また,たとえ他者に非があったとしても,まったく非のない人間などいないのですから(人間が犯す失敗や過ちは,そのほとんどが,誰もが犯す可能性のあるものばかりです。),自分のことは棚に上げたまま,他者を見下したり,嘲笑したり,鬼の首でも取ったかのように騒ぎ立てたり,正義を振りかざして不寛容に責め立てたりするようなことは,極力控えるべきであると思います。他者の非を不寛容に責め立てるということは,いつか自分も他者から不寛容に責め立てられるということに他なりません。そもそも,私たちは他者と支え合い,助け合ってこそ生きていられるのであり,その意味で,私たちと他者は一体なのですから,他者に対しては,同じ人間同士として常に共感的に,「罪を憎んで人を憎まず」という精神を忘れることなく,できる限り寛容かつ友好的な対応を心がけたいものです。(3)(11)(17)関連