「世間なんかなくてもやっていけると考える人間は,よほど,じぶんをだましている人間である。しかしじぶんがいなければ,世間はやっていけないと空想する人間はさらにそれ以上にまちがっている。(ラ・ロシュフーコオ)」(『格言の花束』,堀秀彦編,社会思想社)
○現在の日本のような豊かで安全で便利な社会で暮らしていると,ついつい忘れてしまいがちですが,人間は独りでは(孤立無援の状態では)生きていられません。目に見える直接的なものも目に見えない間接的なもの含め,数知れぬ他者の支えや助けがあればこそ私たちは生きていられるのです。他者に対する感謝の気持ちを決して忘れることなく,困っている他者や苦しんでいる他者に対しては自分にできる限りの手助けをしたいものです。また,人間は自惚(うぬぼ)れやすい生き物であり,自分は周りの人たちから評価され,期待されている,自分がいなくなったら周りの人たちが困り,悲しむと想像しがちです。しかし,実際には,周りの人たちは私たちに対して関心さえそれほど持っていませんし(私たちが周りの人たちに対してほとんど関心を持っていないのと同じく。),たとえ私たちがいなくなったとしても,それほど困ったり,悲しんだりすることもありません。自惚れやすさを抜本的に改善することは難しいと思いますが,調子に乗り過ぎて痛い目に遭わないようにするためにも(あるいは,独善に陥らないようにするためにも),人間は自惚れやすい生き物であるという自覚だけは常に持っていたいものです。(11)(12)(14)関連