「野生動物には富という概念はない。」,「農耕を発明して人工的に食物生産量を増大する技術の発達に伴って,人類は余剰な食物を貯蓄するようになった。・・・(これが)富の源泉になったのである。」(『真面目に生きると損をする』,池田清彦,KADOKAWA)
○私たちは,なぜ生きていくのに必要なものだけで満足することができないのでしょうか。将来の不安を解消するためにも,多少の蓄えは必要かも知れませんが,多少の蓄え程度では満足できず,また,質素な暮らしでは満足できず,必要以上の蓄えや必要以上に贅沢(ぜいたく)な暮らしを追い求めてしまうのは,いったいなぜなのでしょうか。私たちは,必要以上に欲張るからこそ,いつまでたっても満足できず,挙げ句の果てには,生きていくのに必要なものをすべて持っていながら,自分は不幸であるなどと思い込むようになってしまうのではないでしょうか。必要以上に欲張るからこそ,他者と競い合わざるを得なくなる(他者とパイを奪い合わざるを得なくなる)とともに,自然環境を破壊することにもなってしまうのではないでしょうか。贅沢さえ言わなければ,人間が生きていくのに必要なものなど高が知れています。常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送れるようになるためにも,他者と仲良く助け合えるようになるためにも,持続可能性の高い社会を実現できるようになるためにも,必要以上に欲張ることの弊害に,一日でも早く気づけるようになりたいものです。(4)(6)(21)関連