人生に大きな目標や高い理想を掲げるのは,最終的には,自分を人間的に成長・向上させ続けることによって自分の可能性を十分に花開かせ,多少なりとも他者や社会の役に立ち,思い残すことのない充実した有益な人生を送るためなのですから,人生に掲げる目標や理想は,自分の人間的な成長・向上の度合いなどに応じてある程度は柔軟に修正可能なものであることが望ましいと思います。なぜなら,自分が掲げた目標や理想に縛られて身動きが取れなくなり,人間的な成長・向上にブレーキが掛かってしまうのでは,本末転倒だからです。人生に正解などありませんし,人間が考えることに完璧などということはありません。「過ちては則(すなわ)ち改むるに憚(はばか)ること勿(な)かれ」,「過ちて改めざる是(これ)を過ちという」,「君子は豹変(ひょうへん)す」などとも言いますが,人生に掲げる目標や理想についても,いったん掲げた目標や理想を絶対視したり,固執したりすることなく,常に開かれた心で謙虚に見直し,より善い,より人間らしいものに随時修正していく必要があると思います(間違いに気づきながら,それを改めないということは,間違いを二重に犯すことに他なりません。)。また,目標や理想は,必ずしも一つに限定する必要はないと思います。目標や理想を一つに限定してしまったら,何らかの理由でその追及ができなくなってしまった場合に,あるいは,その目標に到達し,その理想を実現してしまった場合に,人生の指針や自分が進むべき道を見失い,途方に暮れてしまう可能性が高いと思うからです。