「偉大なものをどんどん引きずり下ろしていこうという澱(よど)んだ空気,大衆の嫉妬(しっと)の海が広がっているように思えてならない。」(『座右のゲーテ』,齋藤孝,光文社)
○自分は不幸であると思い込んでいる人間は,自分と他者を比較しては幸せそうな他者(特に,社会的な成功を手に入れているように見える他者)を妬みやすく,また,自分が不幸であることの原因や責任を他者に求めては勝手に被害感を募らせて他者を恨みがちです。そして,場合によっては,他者をも不幸な状況に巻き込もうとして,他者の足を引っ張ろうとしたり,他者に直接的に危害を加え,損害を与えようとしたりすることさえあります。したがって,自分は不幸であると思い込んでいる人間が増えれば増えるほど,社会は不寛容でとげとげしく殺伐とした暮らしにくいものになっていきます。社会を寛容で和気藹々(わきあいあい)とした潤いや温かみのある暮らしやすいものにするためにも,私たちは幸せであるべきなのではないでしょうか。自分が今ここでこうして生きていられることを当たり前と思うのではなく,その有り難さに深く思いを致し,心から感謝する習慣を身に付けるなどして,自分は不幸であるなどという思い込みから目を覚ますとともに,生きていることそれ自体に幸せを感じられるようになりたいものです。(3)(6)(7)関連