「汝(なんじ)の隣人を,己(おの)れのごとく愛すべし(「マタイ伝」)」(『文読む月日(上)』,トルストイ,北御門二郎訳,筑摩書房)
◯豊かで安全な社会で生活していると,つい忘れてしまいがちですが,私たちは独りで生きていくことはできません。目に見えない間接的なものも含め,数知れぬ他者の支えがあってこそ生きていけるのであり,自分がやりたいことに打ち込み,自分の可能性を十分に花開かせることができるのも,その他のことを数知れぬ他者が負担・分担してくれているおかげと言えます。そのことを正しく認識しさえすれば,他者を妬んだり恨んだりするのではなく,他者に対して感謝し,他者と敵対して張り合ったり足を引っ張り合ったりするのではなく,他者と仲良く助け合い,幸せを分かち合って生きるのが人間としての自然な生き方であり,自分のためでもあることがよく分かるのではないでしょうか。自分を大切にし,自分の幸せを願うように,ごく当たり前のこととして他者を大切にし,他者の幸せを心から願い,喜べるようになりたいものです。(2020年4月3日)