友好的・協調的な関係にある人間同士の間では,自分の気持ちを相手に正しく伝えることが比較的容易であり,意味のある対話が成り立ちますが,敵対的・排他的な関係にある人間同士の間では,自分の気持ちを相手に正しく伝えることが難しく,意味のある対話がなかなか成り立ちません。極端な話,相手との間に深い信頼関係が築かれていれば,くどくど説明しなくても「以心伝心」で自分の気持ちを相手に伝えることができますが,相手との間に強い不信感が存在していれば,どれだけ説明しても自分の気持ちを相手に伝えることができません。敵対的・排他的な関係にある人間同士の対話や議論が往々にして不毛な理由は,ここにあります。友好的・協調的な関係にある人間同士の対話や議論は,話し合ったり,互いに意見や知恵を出し合ったりして真理に近付いたり,様々な問題に対するより善い対応策を導き出したりすることが主たる目的になりやすいため,総じて実り多いものになりがちであるのに対し,敵対的・排他的な関係にある人間同士の対話や議論は,相手を言い負かすことが主たる目的になりやすいため,総じて不毛なものになりがちです。対話や議論を実り多いものにしたいと望むのであれば,相手との間に友好的・協調的な関係を築くように心掛けることが第一であり,たとえ相手が敵対的・排他的な関係にある人間であったとしても,少なくとの対話や議論をしている間は,対話や議論は「戦い」ではなく「共同(協同)作業」であるということを忘れることなく,相手を競争相手(敵)ではなく協力相手(味方・仲間)と見なし,対話や議論の本来の目的を見失わないようにする必要があると思います。