「富や贅沢(ぜいたく)だけが快楽ではありません。エピクロスは飢えや渇きなどの自然な欲求が満たされ,心身に苦痛のない健やかな魂の状態に生きることを快楽と考えます。質素な生活の中にも魂の平安さであるアタラクシアを味わい,満ち足りた心を持って生きることが,エピクロスの説く人生の最上の快楽なのです。平静な日常を生きることに幸福を感じる心の感度を上げて,健やかな心身をもって今日の一日を生きる上質の心の快楽を味わってみませんか。」(『もういちど読む山川倫理 PLUS 人生の風景編』,小寺聡編,山川出版社)
○私たちは,質素な暮らしでは満ち足りず,贅沢(ぜいたく)な暮らしを追い求めがちです。また,単調(平穏無事)な毎日では物足りず,日々の生活に刺激や興奮やスリルを追い求めがちです。しかし,贅沢な暮らしも,刺激や興奮やスリルも,追い求めれば切りがありません。人間は,どのような贅沢な暮らしにも,どのような刺激や興奮やスリルにも,すぐに慣れ,飽き足りなくなってしまいますので,結局は,常に不満を抱えたまま,より贅沢な暮らしや,より強い刺激や興奮やスリルを追い求め続けることになってしまいます。常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送りたいと望むのであれば,私たちは,質素な暮らしや平穏無事な毎日に満足できるようになる必要があるのではないでしょうか。幸せに対する感度を磨き,高めることによって,質素な暮らしや平穏無事な毎日に生きる喜びや幸せを無限に見いだせるようになることこそが,幸せな人生を送るための秘訣と言えるのではないでしょうか。(1)(4)(6)(8)関連