「民衆は,周囲のひとびとと自分が同じ意見のとき,あるいは自分が尊敬しているひとびとと同じ意見のときだけは,自分の意見を絶対に正しいと思ってしまう。自分一人だけでの判断には自信がない分だけ,「世間」一般の意見なら間違いないはずと,絶対的に信頼してしまうのだ。」(『自由論』,ジョン・スチュワート・ミル,斉藤悦則訳,光文社)
○多数の人間が賛同しているからと言って,その意見が正しいとは限りません。多数決の結果についても,同じことが言えます。多数の人間を長期間にわたって騙(だま)し続けることはできないと言いますが,これは,逆の見方をするなら,多数の人間を一時的に騙(だま)すことや少数の人間を長期間にわたって騙し続けることならできる,ということでもあります。特に,大きな影響力を持った(他者に及ぼす影響力の大きな)有名人が大きな声で表明した意見には,たとえその意見が間違った意見であったとしても,一時的には多数の賛同者を得ることがあります。取り返しのつかない間違いを犯さないようにするためにも,賛同者の多さや意見表明者の知名度の高さや声の大きさなどに惑わされることなく,常に自分の頭で考え,判断し,自分の責任において主体的に行動できるようになりたいものです。もちろん,それでも間違える可能性は十分にありますが,自分の責任において主体的に行動している限りにおいては,他者に責任を押し付けながら従属的に行動している場合とは異なり,たとえその行動が結果的には間違った行動であったとしても,私たちはそこから様々なことを学び,成長の糧にすることができるからです。(12)(14)(20)関連