「「だれも病人でありうる,たまたま何かの恵みによっていまは病気でないのだ」という謙虚さが,病人とともに生きる社会の人間の常識であると思う。/これがまた,看護なり医療なりの原点である。ともに病みうる人間,ともに老いてゆく人間として,相談にのり,手当てをする。」(『看護のための精神医学 第2版』,中井久夫・山口直彦,医学書院)
○私たちは他者と支え合い,助け合ってこそ生きていられるのであり,私たちと他者は持ちつ持たれつの相互依存関係にあるわけですから,困っている他者や苦しんでいる他者の手助けをすることは,人間としての当然の務めです。「困ったときはお互い様」です。したがって,他者に対する手助けは,優越感を味わいながら,あるいは,何らかの見返りや報酬を期待しながら行うようなことではなく,たまたま現在は自分の方が境遇や幸運に恵まれているだけであるという謙虚な気持ちで,むしろ,自分の方が恵まれていることでの負い目を感じながら慎み深く行うべきことです。自分は他者のお陰で生きていられるのだという事実を心に深く刻み付け,他者から支えられ,助けられるだけの人間ではなく,自分も他者を支え,助けられるような人間になることを,是非とも心がけたいものです。また,他者が失敗や過ちを犯した際には,正義を振りかざして不寛容に責め立てるのではなく,同じ人間同士として(同じような失敗や過ちを犯す可能性のある人間同士として),できる限り共感的かつ寛容な対応を心がけたいものです。(11)(17)(19)関連