「頑張ってるのに報われないって言う人はみんな，種を蒔いてそれを育てているんですが，ちゃんとした収穫時期の前に『まだ育たない』と言って嘆いているようなもんです。もっと長い目で見たら，報われない努力なんてないんですよ。あまりにも短い期間の努力で結果が出ることを期待しすぎているだけです。」，「実際に今の自分がやった努力の成果が自分に対して表れるのは，普通の人が考えているよりもっとずっとあとになってからです。それこそ十年とか，場合によっては百年とか・・・」，「しかも，その成果は自分に表れるとは限らない。むしろ，自分の周りの大切な人とか，次の世代とか・・・そういうところに表れてくることだってある。それなのに努力をしたり頑張ったら，今すぐ自分にいいことが起こらなければ〈運が悪い〉〈努力は報われないって〉・・・って大騒ぎです。〈今すぐ，自分だけ〉って考えすぎなんですよ。自分の人生が延々と続く命の物語のほんの一部であるってことを知らないんです」（『運転者』，喜多川泰，ディスカヴァー・トゥエンティワン）
○現在の日本のような豊かで安全で便利な社会で暮らしていると，物事は自分の思い通りになるものと勘違いしてしまいがちですが，人生は本来ままならないものなのであり，物事が自分の思い通りになるなどということは絶対にありません。また，「石の上にも三年」とも言うように，何事であっても，努力することで上達したり，相応の成果が得られたりするのは（あるいは，困難や苦労を乗り越えたりできるのは），長年にわたって怠ることなく努力し続けた結果であるというのが普通です。物事は何でも自分の思い通りになる，努力した成果はすぐに得られると期待してしまうからこそ，私たちはすぐに不平不満を募らせたり，努力を投げ出したりしてしまうのではないでしょうか。実り多い幸せな人生を送りたいと本気で望むのであれば，人生はままならないものであるという事実をあるがままに受け入れるとともに，人生をもっと長い目で見る習慣や，長年にわたって怠ることなく努力し続けられるだけの辛抱強さを身に付ける必要があると思います。なお，努力は自分だけのためにするものではなく，他者や社会のためにもするものなのですから（私たちの人生は，他者や社会の支えや助けがあればこそ成り立っているのですから，私たちは当然，他者や社会のためにも努力すべきですし，他者や社会に益をもたらす行動は，回り回っていつかは必ず自分に益をもたらすことにつながってくるはずです。），たとえ努力したことで自分が報われなかったとしても（直接的な形では報われなかったとしても，間接的な形では報われていることが多いものですが。），その努力が多少なりとも他者や社会の役に立ったなら，大いに喜ぶべきであると思います。（前書き）（４）（６）（９）（11）（13）（19）関連
