「長生きすることばかりを考えて,それよりもよく生きることを考えないとはな。よく生きるかどうかの裁量権は誰にもあって,長生きするかどうかの裁量権は誰にもないのに。(セネカ)」(『古代ローマの言葉』,ブノワ・デゾンブル編,中居久夫・松田浩則訳,紀伊國屋書店」)
○長生きできるかどうかは,ほとんど運次第ですが,実り多い幸せな人生を送れるかどうかは,私たちの意志や努力次第です。したがって,私たちは,長生きすることより,実り多い幸せな人生を送ることにこそ関心を払い,力を注ぐべきと言えます。もちろん,生きていればこそ実り多い人生を送ることもできるのですから,長生きできるに越したことはありませんが,たとえそれほど長生きできなかったとしても,真に人間らしく実り多い(自分にとってのみならず他者や社会にとっても有益な),生きる喜びや希望に満ちた幸せな人生を送ることができたなら,私たちは自分の人生に満足することができ,死が訪れた際にも,それほど慌てふためいたり取り乱したりすることはないのではないでしょうか。逆に,たとえどれだけ長生きできたとしても,長生きすることばかりに関心を払い,力を注ぎ,実り多い幸せな人生を送るための努力を怠っていたとしたら,私たちはきっと,自分の人生に満足することができず,死が訪れた際には大いに後悔するはずです。(前書き)(2)(8)(9)(11)(14)(15)(20)(後書き)関連