「他人を不幸にしておいて自分だけは幸福になる,そんなことのあろうはずはないのです。(セネカ)」(『ローマの哲人 セネカの言葉』,中野孝次,岩波書店)
○他者が不幸であることは,決して「対岸の火事」などではありません。「明日は我が身」です。私たちは,他者の支えや助けがあればこそ生きていられるのであり(孤立無援の状態では生きていられないのであり),その意味で,私たちと他者は一体なのですから,不幸な状況に陥っている他者が幸せになるための手助けをすることは,人間としての当然の務めなのではないでしょうか。優越感を味わいながら,あるいは,何らかの見返りや報酬を期待して行うようなことではなく,当たり前のこととして,むしろ,多少の負い目(境遇に恵まれるなどして一足先に幸せな人生を送ることができている自分に対する負い目)を感じながら行うべきことなのではないでしょうか。なお,自分は不幸であると思い込んでいる人間は,すぐに自暴自棄になっては道を踏み外してしまいやすい上に,他者,特に,自分より幸せそうに見える他者を妬んでは,他者の足を引っ張ろうとしたり,他者をも不幸な状況に巻き込もうとしたりしてしまいがちですが,そのような行動によって自分をますます不幸な状況に追い込んでしまうことになります。彼らがそのような悪循環に陥ってしまわないように,できる限りの手助けをしたいものです。(3)(11)(19)関連