「贈与に対しては反対給付義務が生じます。「もらいっぱなしでは罰が当たる」という精神的な負債感が残る。・・・でも,返礼は贈与してくれた人に直接するものではありません。自分もまた贈る機会があったときに,差し出せるものがあれば,それを贈与すればいい。」(『日本習合論』,内田樹,ミシマ社)
○私たちは,独りでは生きていけません。私たちは,数知れぬ他者の直接的・間接的な支えや助けがあればこそ,これまで生きてこられたのだし,これからも生きていけるのです。私たちと他者は,言わば持ちつ持たれつの相互依存の関係にあるわけですから,支えや助けを必要としている他者がいるなら,その支援や協力をすることは,人間としての当然の務めです。優越感を味わいながら,あるいは,相手からの感謝や世間からの称賛を期待しながら行うようなことではなく,むしろ,若干の負い目(支援・協力する相手より自分の方が恵まれていることでの)を感じながら慎み深く行うべきことです。私たちと他者は一体なのであり,他者を益する行動は,必ず回り回って自分を益することにつながってくるのであり,逆に,他者を害する行動は,必ず回り回って自分を害することにつながってくるのですから,他者を競争相手(敵)と見なして席を奪い合うような生き方ではなく,他者を協力相手(味方)と見なして仲良く助け合うような生き方をこそ心がけたいものです。(2021年6月8日)(11)(19)(20)関連