「十分にあってもわずかしかないと思う人にとっては,なにものも十分でない。」,「わずかなもので十分と思わない人,すくなくもこのような人には,十分なものは存しない。」(『エピクロス』,出隆・岩崎允胤訳,岩波書店)
○人間の欲望には際限がありませんので,欲張り続ける限り,たとえどれだけ多くのものを手に入れたとしても,私たちの心が満ち足りるということはありません。他方,必要以上に欲張ることさえやめるなら,たとえ必要最小限のものしか持っていなかったとしても,私たちは満足することが可能になります。常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送りたいと望むのであれば,多くのもの(生きていくのに必要以上のものまで)を手に入れることにではなく,自分の欲望に自分の意志で(他者に強制されてではなく)ブレーキを掛けられるようになることにこそ,関心を払い,力を注ぐべきなのではないでしょうか。足るを知り,自分が持ってるものだけで満足できるようになるなら,必要以上のものまでを持ちながらも不平不満ばかりを募らせ,挙げ句の果てには自分は不幸であると思い込んでしまうようなことはきっとなくなります。(4)(6)(21)関連