「動物は本能によって欲が制限されていますが,人間は本能のリミッターがはずれて自由を手にした分,欲望を放置すれば限りなく膨張して,破滅的な事態をもたらします。それは富や権力への無制限の欲望にとらわれた人間が,世の中に何をもたらしたかをみれば明らかです。」(『もういちど読む山川倫理 PLUS 人生の風景編』,小寺聡編,山川出版社)
○人間の欲望の多くは,本能(自然)に基づくものではないだけに,限りがなく,放置すればどこまでも肥大化していきます。喉の渇きが水を飲むことによって簡単に癒やせるのとは異なり,欲張り続ける限り,たとえどれだけ多くのものを手に入れたとしても私たちの心が満ち足りるということはありません。常に不満を抱えながら,死ぬ瞬間まで,自分の欲望に追い立てられ,振り回される形で,より多くのものを追い求めてあくせくし続けることになってしまいます。当然のことながら,他者はパイを奪い合う競争相手にならざるを得ませんし,誰もが欲張り続けるなら,自然環境にかかる負荷は増大する一方です。常に満ち足りた気持ちで心安らかに幸せな人生を送りたいと望むのであれば,私たちは,自分の欲望に自分の意志でブレーキを掛け,自分をできる限り無欲・小欲の状態に近づける必要があるのではないでしょうか。必要以上に欲張ることさえやめれば,私たちは,たとえ必要最小限のものしか持っていなかったとしても満足することが可能になります。他者を競争相手(敵)ではなく協力相手(味方・仲間)と見なして仲良く助け合うことも可能になりますし,誰もが必要以上に欲張ることをやめれば,自然環境を破壊してしまう(生態系のバランスを崩してしまう)危険性も格段に低下します。(4)(6)(20)関連