「セネカが言うように,「望むものを何もかも手に入れることはだれにもできない」けれども,「持っていないものを望まず,差し出されたものを機嫌よく享受することは」だれでもできるのである。」(『良き人生について』,ウィリアム・B・アーヴァイン,竹内和世訳,白揚社)
○欲張り続ける限り,欲しい物は次から次へと現れてくるため,たとえどれだけ多くの物を手に入れたとしても,私たちの心が満ち足りるということはありません。むしろ,不平不満ばかりを募らせては,自分は不幸であるなどと思い込むようになってしまうのが落ちです。他方,必要以上に欲張ることさえやめれば,たとえ必要最小限の物しか持っていなかったとしても,私たちは満足することが可能になります。常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送ることが可能になります。ただし,人間の欲望は,本能(自然)に基づくものではないだけに,放って置けばどこまでも肥大化していく傾向がありますし,現在の社会の風潮としても,経済成長を促すべく,その肥大化を歓迎し,奨励する傾向がありますので,必要以上に欲張ることをやめるためには,相当に強い意志が必要になります。しかし,強い意志さえあれば,決して不可能なことではありません。蟻(あり)地獄のような不幸な状況から抜け出すためにも,社会の風潮に流されることなく,強い意志を持って自分の欲望の肥大化にブレーキを掛けられるようになりたいものです。(4)(6)関連