「金儲けにだけ心を向ける人は/銀行の窓口みたいなもので/金の出し入れのほか何も楽しまない。」(『タオ 老子』,加島祥造,筑摩書房)
○お金がなければ生きていけませんが,私たちは,生きていくためにお金を稼いでいるのであり,お金を稼ぐために生きているのではありません。お金など,生きていくのに最低限必要な程度の額,できればそれに多少上乗せした程度の額が稼げればいいのであり,必要以上のお金を稼ぐことにではなく,人生を楽しみ,味わい尽くすことにこそ,限りある大切な時間やエネルギーを使いたいものです。お金で買えない物など何もないと言う人もいますが,私たちの命,その命を守り,私たちが生きることを可能にしてくれている人体や自然や宇宙の神秘的とさえ言える精妙な仕組みや働き,私たちの人生を成り立たせてくれている数知れぬ他者の直接的・間接的な支えや助け,自分が今ここでこうして生きていられることを感謝する気持ち,曇りのない眼や心の平安など,本当に価値ある大切な物は,お金では買えない物ばかりなのではないでしょうか。本当に価値のある大切な物は,決してお金では買えない,という事実に気づけないということは(お金では買えない物の有り難さに気づけないということは),不幸以外の何物でもないと思います。(20)関連