「セネカは,富に執着しないかぎり,それを楽しむのは何の問題もないと指摘する」,「仏陀は金持ちの商人であったアナタピンディカの質問に答えて,「人を奴隷にするのは生でも,富でも,力でもなく,生と富と力への執着なのだ。」と語った」(『欲望について』,ウィリアム・B・アーヴァイン,竹内和世訳,白揚社)
○財産や地位や権力や名声などを手に入れることに執着すればするほど,心の目は曇り,心の平安は乱れ,不平不満,妬みそねみ,恨みつらみ,失意失望,自暴自棄といった心理状態に自分を追い込んでしまう危険性は高まり,幸せであることからは遠ざかってしまいます。しかし,自分が好きなことに全力で打ち込み,最善を尽くした結果として,期せずして財産や地位や権力や名声などを手に入れてしまったとしても,それらに執着しない限りは,それらによって心の目が曇ったり,心の平安が乱れたり,不幸な心理状態に自分を追い込んでしまう危険性が高まったりすることはありません。むしろ,活用次第では,それらを他者や社会のために役に立てることさえ可能です。要するに,財産や地位や権力や名声などに対しては,自分がそれらの虜(とりこ)になってしまわないように最大限の用心をする必要はありますが,それらに執着しないでいられるなら,それらを親の敵のように忌み嫌う必要まではないということです。(1)(6)(10)(14)関連