「高度成長は終わったのかも知れないが,そのバランスシートはまだ書かれていない。しかし,その中に損失として自然破壊とともに,青春期あるいは児童期の破壊を記してほしいものである。われわれは大量の緑とともに大量の青春を失ったと言えなくもない。」(『中井久夫集1 働く患者』,みすず書房)
○欲張り続ける限り,他者は有限のパイを奪い合う敵にならざるを得ず,誰もが欲張り続けるなら,自然環境に対する負荷は過大なものにならざるを得ません。何かを得るためには何かを失わなければならないというのは人生の真理ですが,私たちは欲張り続けることによって,これまでにいったい何を得て(例えば,高度経済成長),何を失ったのでしょうか(例えば,「大量の緑」と「大量の青春」)。この先いったい何を得て,何を失おうとしているのでしょうか。欲張り続けることにもそろそろ限界が近付いているのではないでしょうか。私たちがこれまでに失ったものや,これから失おうとしているものについて,もう少し自覚的でありたいと思いますし,必要以上に欲張らないことの大切さ(足るを知ることの大切さ)について,そろそろ気付けるようになりたいものです。必要以上に欲張ることさえやめれば,私たちは他者と仲良く助け合ったり,生きる喜びや幸せを分かち合ったりすることが可能になりますし,誰もが必要以上に欲張ることをやめるなら,自然環境を破壊してしまう危険性も格段に低下するはずです。(4)(6)(21)関連