「受け取った食材の,良し悪し,多い少ないについては,一切,あれこれ思惑を働かせてはいけない。ただ,与えられた材料を,いかに,どう調理すればいいかを考え,工夫する。けっしてしてはいけないことは,顔色を変えて,食材の多少を口にして文句を言うことである。」,「集まった食材は・・・わが命,心そのものと思って,大切に扱わなければいけない。」,「食材によって心を変えたり,人を見て言葉や態度を改めるのは真の修行僧とはいえない。」,「粗末な菜っ葉汁だからといって,下の下と思うのは,心貧しい人である。」(『典座教訓』,道元,藤井宗哲訳・解説,角川学芸出版)
○不満を言い出せば,切りがありません。どのような恵まれた境遇にでも,不満を言おうと思えば,いくらでも言えます。しかし,自分の人生を不満たらたらに送ることに(そのような不幸な人生を送ることに),いったいどのような意味があるのでしょうか。人生は,すなわち,私たちがこの世の中で生きることができるチャンスは,たった一度きりです。せっかくなら生きる喜びや希望に満ちた幸せな人生を送りたいものです。たった一度きりの人生に大きな悔いを残さないようにするためにも,私たちは,自分の境遇に不満を言うことはやめ,自分の人生を大いに楽しみ,味わい尽くすことにこそ,限りある大切な時間やエネルギーを使うべきなのではないでしょうか。私たちが生きているということは,免疫という人体の仕組みや働き一つを取っても分かるように,よくよく考えてみれば一つの奇跡です。心から感謝すべき有り難いことです。自分が今ここでこうして生きていられることを当たり前と思うことなく,その有り難さに常に深く思いを致し,心から感謝できるようになるなら,私たちはきっと,たとえどのような逆境にあったとしても,常に満ち足りた気持ちで心豊かに幸せな人生を送れるようになるはずです。(前書き)(1)(2)(4)(6)(9)(10)(15)関連