改めて言うまでもなく，お金を稼ぐことは，人生の手段であるに過ぎず，目的ではありません。私たちは生きていくためにお金を稼ぐのであり，お金を稼ぐために生きているのではありません。確かに，生きていくのにお金は欠かせませんが，私たちが生きていくのに，いったいどれくらいのお金が必要なのでしょうか。「起きて半畳寝て一畳」，「千石万石も米五合」，「千石万石も飯一杯」，「天下取っても二合半」などとも言うように，贅沢（ぜいたく）さえ言わなければ，人間が生きていくのに（衣食住を最低限確保するのに）必要なお金など，本当は高が知れているのではないでしょうか。それなのに，なぜ私たちは，必要以上のお金を手に入れようと欲張り続け，限りある大切な時間やエネルギーのほとんどをお金を稼ぐことに費やしてしまうのでしょうか。そして，必要以上のお金が手に入らないからといって不平不満ばかりを募らせてしまうのでしょうか。これではまるで，お金を稼ぐことが人生の目的であり，お金を稼ぐために生きている（お金を稼ぐためにこの世の中に生まれてきた）ようなものです。贅沢を言えば切りがありません。お金は，生きていくのに最低限必要な程度の額，できればそれに多少上乗せした程度の額があれば十分なのではないでしょうか。誰もが必要以上に欲張ることなく，自分の欲望に自分の意志でブレーキを掛けられるようになるなら，経済格差は小さくなり，紛争は減り，自然環境にかかる負荷は軽減されるでしょうし，誰もが常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送ることが可能になるのではないでしょうか。
