「我々はなんと多くの物を,他人がそれをやっているという理由でやり,また他人がそれを所有しているという理由で所持していることか!(セネカ)」(『ローマの哲人 セネカの言葉』,中野孝次,岩波書店)
○私たちは,自分の人生に満足できないからこそ,また,自分が進むべき道が定まっていないからこそ,他者の暮らし向きや動向が気になるのであり,自分と他者を比較しては他者との勝ち負けにこだわってしまうのではないでしょうか。そして,他者を競争相手(敵)と見みしては,互いに足を引っ張り合ったり,パイを奪い合ったりしてしまうのではないでしょうか。しかし,私たちは他者の支えや助けがあればこそ生きていられるのであり,その意味で,私たちと他者は一体なのですから(持ちつ持たれつの相互依存関係にあるのですから),本来は勝ちも負けもないはずです。むしろ,他者を協力相手(味方・仲間)と見なして,互いに助け合ったり,幸せを分かち合ったりするような生き方こそが,人間としてより自然で真っ当な生き方と言えるのではないでしょうか。そのような生き方を実現できるようになるためにも,自分と他者を比較することや,他者との勝負に勝つことなどにではなく,足るを知り(自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに常に深く思いを致し,心から感謝する習慣を身に付けるなどして),自分の人生に満足できるようになることや,自分が本当にやりたいと思える好きなことを見つけ(そこに自分なりの目標や理想を見いだして),自分が進むべき道を明確化することなどにこそ,全力を注ぎたいものです。(4)(6)(11)(13)(14)(18)(20)関連