「病気は精神的幸福の一形式である。病気は,われわれの欲望,われわれの不安に,はっきりした限界を設けるのだから。(モーロア)」,「病人というものは正常な人よりも自己の魂により近く迫るものだ。(マルセル・プルースト)」(『心をささえる一言』,河盛好蔵,青春出版社)
○何事にも一長一短があります。老いることや病気になることや死ぬことにさえ,否定的な側面だけでなく肯定的な側面があります。実際,人間は老いることによって自然に小欲・無欲の状態に近付き,その結果,不平不満や妬みそねみの感情などを募らせて心の平安を乱すことが自然に少なくなっていく(心の平安を保つことが次第に容易になっていく)のが普通です。また,病気は,健康の有り難さのみならず,自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに気付き,「生きてるだけで丸儲(まるもう)け」(さんま)という心境に達するよい切っ掛けになり得ます。そして,「生きてるだけで丸儲け」という心境に達することができたなら,私たちはきっと,たとえどのような逆境(苦境)にあったとしても,たとえどのような不運に見舞われたとしても,生きている限りは幸せであり続けることが可能になるはずです。もちろん,生きていることそれ自体に幸せを感じられるようになるためには,死というものが欠かせません。命が有限であればこそ生きる喜びがあるのであり,生きる喜びがあればこそ私たちは生きていることやこの世の中に生まれてきたこと(この世の中で生きるチャンスを与えられたこと)に感謝したり,幸せを感じたりすることができるのですから。(2)(4)(6)(8)(9)関連