「前を歩いている人を追い抜かねばならない,後ろからくる人に追い抜かれてはいけないとは考える必要はありません。誰かと競争しようとはせずに,自分がただ前を向いて確実に一歩前に足を運ぼうと意識して歩いていれば,それでよいのです。」(『100分de名著 アドラー『人生の意味の心理学』』,岸見一郎,NHK出版)
○他者と競い合って社会的(世俗的)な成功を収め,財産や地位や権力や名声などを手に入れなければ幸せになれないなどと教え込まれ,そのようなデマを鵜呑(うの)みにしているからこそ,私たちは他者を協力相手ではなく,競争相手と見なさざるを得なくなってしまうのではないでしょうか。しかし,社会的な成功を収めたからと言って幸せな人生が約束されるわけではありませんし,そもそも,私たちは他者と支え合い,助け合ってこそ生きていられるのであり,その意味で私たちと他者は本来一体なのですから,他者と足を引っ張り合ったり,パイを奪い合ったりするような生き方ではなく,他者と仲良く助け合ったり,生きる喜びや幸せを分かち合ったりするような生き方こそが,人間にとって自然で真っ当な生き方と言えるのではないでしょうか。他者と競い合って社会的な成功を収めなければ幸せになれないなどといったデマに踊らされることなく(そのようなデマによって自分の一生を台無しにすることなく),自分が信じる目標や理想に向かって自分が進むべき道を自分の歩幅で一歩ずつ前進し続けること(そのことを通じて,自分の可能性を十分に花開かせるとともに,多少なりとも他者や社会の役に立ち,思い残すことのない充実した有益な人生を送ること)にこそ,限りある大切な時間やエネルギーを使いたいものです。(1)(4)(6)(10)(11)(13)(14)(18)(20)関連