「悪人がいくら害悪を及ぼすからといっても,善人の及ぼす害悪にまさる害悪はない。」(『ツァラトゥストラはこう言った』,ニーチェ,氷上英廣訳,岩波書店)
○「地獄は善意で敷きつめられている」とも言うように,独り善がりな善意ほど怖いものはありません。なぜなら,独り善がりな善意に基づく行動は,たとえそれが間違った行動であったとしても,自分は善いことをしているという意識が強すぎるため,当事者はその間違いになかなか気づくことができず,また,善意に基づくものであるだけに周囲から批判されることも少なく,したがって,ブレーキが掛からないまま無反省に何度も繰り返されたり,どこまでもエスカレートしてしまったりする危険性が高いからです(悪意に基づく行動なら,どこかで何らかのブレーキが働くものです。)。人助けなど,善意でに何かを行う際には,自分が独善に陥っている可能性について徹底的に内省した上で,また,それが間違った行動である可能性があることを十分に認識した上で,自分の行動がどのような結果を招いているかということを注意深く見守り,見届けつつ,できる限り慎重に行うことを心がけたいものです。(12)関連