「日本人は古来より,罪をおかす弱いもの,世間からはじかれて負けたものへ,共感して生きてきたのです。」(『作家と楽しむ古典 古事記 日本霊異記・発心集 竹取物語 宇治拾遺物語 百人一首』池澤夏樹他,河出書房新社)
○不平不満を募らせ,あるいは,失意失望の淵(ふち)に沈み,自分は不幸であると思い込んでいる人間は,自分より幸せそうに見える他者を妬みやすく(「隣の芝生は青い」とも言うように,総じて他者は自分より幸せそうに見えるものですが。),そのような他者の足を引っ張ろうとしたり,そのような他者をも不幸な状況に巻き込もうとしたりしがちです。例えば,そのような他者が失敗や過ちを犯した場合には,自分のことは棚に上げたまま,鬼の首でも取ったかのように騒ぎ立て,正義を振りかざして不寛容に責め立てがちです。したがって,自分は不幸であると思い込んでいる人間が増えれば増えるほど,世の中は不寛容でとげとげしく殺伐とした暮らしにくいものになっていきます。そのような世の中で暮らしたくない,世の中をもっと寛容で和気藹々(わきあいあい)とした温かみや潤いのある暮らしやすいものにしたいと思うのであれば,自分は不幸であると思い込んでいる人間を,少しずつでも減らしていく必要があるのではないでしょうか。そのためにも,まずは,自分は不幸であると思い込んでいる人間が増えつつある原因を,しっかり見極める必要があるのではないでしょうか。(3)(17)(18)関連