「もちろん,私たちは,愛する人びとの幸福を願うべきである。しかし,私たち自身の幸福と引き換えであってはならない。」(『ラッセル 幸福論』,安藤貞雄訳,岩波書店)
○私たちは他者の支えや助けがなければ生きていけず,その意味で私たちと他者は一体なのですから,自分の幸せのみならず,他者の幸せをも願い,喜び,互いに仲良く助け合い,幸せを分かち合うような生き方こそが,人間として自然で真っ当な生き方と言えるのではないでしょうか。なお,世の中には,自分の幸せを犠牲にしてでも他者の幸せのために生きたいと願っている人がいるかも知れませんが,自己犠牲的な行動の背景には何らかの見返りを求める気持ちが無意識的に潜んでいるものですし,その自己犠牲的な行動がたとえ何ら見返りを求めないものであったとしても(子供に対する親の自己犠牲的な行動のように),他者(親)の幸せを犠牲にすることよって幸せになれた当人(子供)は,その幸せを本当に心の底から喜ぶことができるでしょうか。自分が幸せであることと利己的であることは(他者のために自分の幸せを犠牲にすることと利他的であることは),まったく別のことです。幸せに定員などなく,心の持ち方次第で誰でも幸せになれるのですから,自分の幸せを犠牲にしてでも他者の幸せのために生きようなどと考えたり,行動したりすべきではないと思います(そのような恩着せがましい考えや行動は,他者にとっては大きな重荷であり,迷惑なだけかも知れません。)。(2021年3月26日)(10)(11)(16)(19)関連