「人類の歴史を振り返れば,その大半は狩猟採集生活でした。集団を作って女性は採集,男性は狩猟に従事し,子どもは高齢者が面倒を見て,収穫を全員で分けるという共存共栄の暮らしを長く続けてきたわけです。」(『60代からの幸福をつかむ極意』,齋藤孝,中央公論新社)
○私たちは,必要以上に欲張るからこそ,他者(あるいは,他国)を競争相手(敵)と見なして足を引っ張り合ったり,パイを奪い合ったりせざるを得なくなってしまうのではないでしょうか。私たちが暮らしている社会は,人類史上最も豊かな社会と言えます。そして,私たちがこのような豊かな暮らしを手に入れることができたのは,私たち人類が,生きていくのに必要な物だけでは満足せず,必要以上に欲張り続けた結果とも言えますが,このような豊かな暮らしを手に入れるために,私たち人類は何を失い,何を犠牲にしてきたのでしょうか。豊かな社会で暮らしていると,人間は独りでは生きていられないという事実をついつい忘れてしまいがちですが,人間は他者の支えや助けがなければ生きていられません。実際,衣・食・住のどれ一つを取っても,少なくとも現代社会において完全に自給自足できている人間などいないのではないでしょうか。私たちは,目に見える直接的なものも目に見えない間接的なものも含め,数知れぬ他者の支えや助けがあればこそ生きていられるのであり,私たちと他者は本来一体なのですから(持ちつ持たれつの相互依存関係にあるわけですから),他者を協力相手(味方・仲間)と見なして助け合ったり,幸せを分かち合ったりするような生き方こそが,人間として自然で真っ当な生き方と言えるのではないでしょうか。狩猟採集時代に戻ることはできませんが(そのようなことは誰も望まないと思いますので。),豊かさをある程度は犠牲にしてでも,そろそろ必要以上に欲張り続けることはやめ,他者との共存共栄を目指す方向に舵(かじ)を切りたいものです。(11)(20)関連