「自立と言っても,結局は自分がどれだけ他に依存しているかをしっかり自覚することなのだ」(『河合隼雄著作集 第Ⅱ期第11巻 日本人と日本社会のゆくえ』,岩波書店)
○現代の日本のような豊かで安全で便利な社会で暮らしていると,ついつい忘れてしまいがちですが,人間は独りでは(孤立無援の状況では)生きていられません。私たちは,目に見える直接的なものも目に見えない間接的なものも含め,数知れぬ他者の支えや助けがあればこそ生きていられるのです。実際,生きていくのに欠かすことのできない衣・食・住のどれ一つを取っても,完全に自給自足できている人など,少なくとも現代の日本には一人もいないのではないでしょうか。したがって,人間が自立するというのは,自分がどれだけ他者に依存しているのかということを十分に自覚した上で,他者に支えられ助けられるだけではなく,自分も他者を支え助けられるようになる(相互依存関係になる)ということに他ならず,自分は誰にも頼らずに自分独りの力で生きているなどと勘違いし,他者に支えられ助けられるだけで,自分が他者を支えたり助けたりすることには無関心・消極的な人間は,まだまだ依存状態にあるということなのではないでしょうか。豊かで安全で便利な暮らしを享受しつつも,人間は独りでは生きていられないという事実を(私たち人間は誰もが,持ちつ持たれつの相互依存関係にあるという事実を),そして,他者に対する感謝の気持ちを,決して忘れないようにしたいものです。(11)(12)(14)関連