「(成長と工業化によって)それまでの人間の歴史においてはずっと夢に見るしかなかったような水準の物質的な繁栄を,驚くほど多くの人が享受するようになった。」(『ビッグヒストリー』,デヴィッド・クリスチャン他,石井克弥他訳,明石書店)
○私たちが暮らしている社会は,人類史上最も豊かで安全で便利な社会と言えます。しかし,このような恵まれた社会で暮らしながら,自分は幸せであると実感できている人は,いったいどれくらいいるのでしょうか。社会の進歩・発展と私たちの幸福度が比例していないのだとしたら,これまでの延長線上に社会が進歩・発展し続けることに,いったいどのような意味があるのでしょうか。ここらへんでいったん立ち止まり,誰もが幸せを実感できるような,しかも,持続可能な社会を実現するためにはどうすればよいのかということを,みんなで真剣に考えてみる必要があるのではないでしょうか。このような恵まれた社会で暮らせることを当たり前と思うことなく,その有り難さに気づき,心から感謝できるようになるためにも,私たちは,足るを知ることを学び,自分の欲望にブレーキを掛けられるようになる必要があるのではないでしょうか。たとえ,これまでの社会の進歩・発展が,人間の欲望の肥大化によって支えられていたのだとしても。(4)(6)(11)(20)関連