「いったい進歩とは何であろうか(宮本常一)」,「過去の社会に生きた人びとを,現代よりも貧しく,低いレベルの生活をしていると考え,同じように,現代の社会自体のなかで「下層」の社会に生きる人びとを「卑小」に考える見方に対する批判」(『宮本常一『忘れられた日本人』を読む』,網野善彦,岩波書店)
○社会の進歩・発展には,確かに目を見張るものがあります。実際,私たちは,人類史上最も豊かで安全で便利な社会で暮らすことができています。しかし,社会の進歩・発展に伴って,自分は幸せであると思っている人は,本当に増えているのでしょうか。むしろ,自分は不幸であると思っている人ばかりが増えているのではないでしょうか。もし,そうだとしたら,社会が進歩・発展することには,また,進歩・発展した社会において社会的な成功を収めることには,いったいどのような意味があるのでしょうか。何事にも一長一短がある以上,何かを得れば,必ず何かを失うことになります。私たちは何を得て,何を失ってきたのでしょうか。私たちは何を得るために,何を失おうとしているのでしょうか。いったん立ち止まって,真剣に考えてみる必要があるのではないでしょうか。私たちの誰もが幸せになり,幸せであり続けられるような社会の実現(私たちの考え方や生き方や心の持ち方などを変えることも含め)を目指して適切に軌道修正を図った上で,改めて歩き出す必要があるのではないでしょうか。(4)(6)(7)(11)(12)(20)関連