「他者を仲間であると見なすことができれば,他者と競争しようとはしないだろう。」,「戦争は競争の最たるものだ(アドラー)」(『幸福の哲学』,岸見一郎,講談社)
○豊かで安全で便利な社会で生活していると,互いに助け合う必要性が低下することもあり,私たちは他者を,協力相手(味方・仲間)ではなく競争相手(敵)と見なすようになってしまいがちです。そして,互いに足を引っ張り合ったり,パイ(具体的には,財産や地位や権力や名声など)を奪い合ったりするようになってしまいがちです。しかし,社会がいくら豊かで安全で便利なものになろうとも,人間は独りでは(孤立無援の状態では)生きていられない,という事実に変わりはありません。私たちは実際には,目に見える直接的なものも目に見えない間接的なものも含め,数知れぬ他者の支えや助けがあるからこそ生きていられるのであり,私たちと他者は持ちつ持たれつの相互依存関係(一蓮托生(いちれんたくしょう)の関係)にあるわけですから,他者を協力相手と見なして,互いに仲良く助け合ったり,幸せを分かち合ったりするような生き方こそが,人間として,より自然で真っ当な生き方と言えるのではないでしょうか。人間は独りでは生きていられないという事実をしっかりと心に刻み,競争することよりも協力することにこそ,大きな価値を見いだせるようになりたいものです。(1)(4)(11)(17)関連