「(お前は)結構なお屋敷を建てて,虎の剥製を飾った部屋にふんぞりかえって,儲けた金の勘定をしとるのが,人生の勝利者の姿やくらいに思うちょる男よ。」(『流転の海』,宮本輝,新潮社)
○経済的な勝者が人生の勝者であるとは限らず,経済的な豊かさが心の豊かさにつながるとは限りません。にもかかわらず,私たちはなぜ,経済的な豊かさばかりに大きな価値を置き,経済的な豊かさばかりを追い求めるのでしょうか。経済的に豊かでなければ幸せにはなれないなどと幼い頃から誰かに教え込まれ続け,それを鵜呑(うの)みにしてしまっているせいでしょうか。もちろん,生きていくためにお金は必要ですが,お金はあくまでも生きていくための手段なのであり,目的ではありません。生きていくのに必要なだけのお金が稼げれば,それで十分なのではないでしょうか。お金を稼ぐことよりも,足るを知り,普通のつましい生活に幸せを感じられるようになることや,自分が本当にやりたいと思える好きなことを見つけ,それに全身全霊で打ち込むこと(そのことを通じて,多少なりとも他者や社会の役に立つこと)などにこそ,限りある大切な時間やエネルギーを使いたいものです。(10)(13)(14)(20)関連