「どこにでもあることだが,人間が欲に負けるというのは悲しいもんだと思いますよ」(『さぶ』(『決定版 山本周五郎全集』所収),近代日本文学電子叢書)
○人間の欲望には切りがなく,強い意志を持って意識的にブレーキを掛けない限り,肥大化する一方となってしまいがちです。つまり,私たちは,自分の欲望にブレーキを掛けない限り,いつまでたっても満ち足りるということはなく,常に不満を抱えたまま,自分の欲望に追い立てられ,振り回され続けることになってしまう,すなわち,自分の欲望の奴隷になってしまうということです。そして,自分の欲望に追い立てられ,振り回され続けた挙げ句,いつしか,不平不満,妬みそねみ,恨みつらみ,失意失望,自暴自棄といった心理状態に自分を追い込み,自分は不幸であるなどと思い込むようになってしまう可能性が高いということです。私たちは本来,生きているというだけですでに十分に幸せなのに(生きているということは一つの奇跡であり,心から感謝すべきことであると思います。),心の平安を失い,心の目を曇らせてしまうことにより,そのことに気づけなくなってしまう可能性が高いということです。それはやはり,悲しいことと言わざるを得ません。自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに気づき,心から感謝できるようになるためにも,ひいては,生きていることそれ自体に幸せを感じられるようになるためにも,是非とも自分の欲望に打ち克ち,自分の欲望に適切にブレーキを掛けられるようになりたいものです。(1)(3)(4)(6)(10)(14)関連