「罪は欲望から生じ,苦しみは欲望から生じる。欲望を制することによって,罪が制せられ,欲望を制することによって,苦しみが制せられる。」(『原始仏典』,中村元,筑摩書房)
○「欲に頂(いただき)なし」と言うように,人間の欲望は,必ずしも本能に基づくものではないだけに,限りがなく,放置すれば際限なく肥大化する傾向があります。したがって,自分の欲望に強い意志を持って意識的にブレーキを掛けない限り,心が満ち足りるということはなく,常に不満を抱えながら,欲望に振り回され(欲望の奴隷になり),場合によっては,欲に目を暗ませて道を踏み外してしまうようなことにもなりかねません。常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送りたいと願うのであれば,少なくとも,道を踏み外したくないと願うのであれば,必要以上に欲張ることなく,自分の欲望に適切にブレーキを掛けられるようになる必要があるのではないでしょうか。そのためにも,まずは,自分が今ここでこうして生きていられることに有り難さ(人類史上最も豊かで安全で便利な社会において生活できることの有り難さ,自分の人生を成り立たせてくれている数知れぬ他者の支えや助けの有り難さ,自分の命を守り,自分が生きることを可能にしてくれている宇宙や自然や人体の神秘的とさえ言える精妙な仕組みや働きの有り難さなど)に深く思いを致し,自分が持っている物(自分に与えられている物)の豊かさに,心から感謝できるようになりたいものです。(3)(4)(6)(10)関連