「自分がどれほど幸福な人間であるかを,僕はよく知っている。人類史上最も幸福な場所と時代に,生まれ合わせたからである。/戦争はなかった。機会は均等だった。宿命的な困難には最大限の援助があった。」(『おもかげ』,浅田次郎,毎日新聞出版)
○私たちが生活している社会は,人類史上最も豊かで安全で便利な社会と言えます。にもかかわらず,不平不満ばかりを募らせてしまうのは,そのような社会で生活できることの有り難さに気づけず,あるいは,気づけたとしても,その気づきに伴う感動や感謝する気持ちをすぐに忘れてしまうからなのではないでしょうか。私たちは,どのような恵まれた境遇にもすぐに慣れ,その境遇を当たり前と思って飽き足りなくなり,より多くの物を求めてしまいがちですが,それでは,いつまでたっても心が満ち足りるということはなく,常に不満を抱えたまま,やがては,自分は不幸であるなどと思い込むようになってしまうのが落ちです。常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送りたいと願うのであれば,自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに常に深く思いを致し,心から感謝する習慣を身に付けるなどして,足るを知ることを学び,たとえそれが必要最小限の物であったとしても,自分が持っている物(自分に与えられている物)だけで満足できるようになる必要があるのではないでしょうか。(1)(4)(6)(11)関連