「堪え難い心の動揺に,どうして堪えるか。逃げず,ごまかさず,これに堪え抜く,恐らくたった一つの道は,これを直視し,その性質を見極め,これをわが所有と変ずる,そういう道だ。」(『小林秀雄全作品 28(本居宣長)』,新潮社)
○人間の欲望や感情や思考は,人間が生きている証(あかし)であり,生きている以上それらをなくすことはできません。しかし,自分の欲望や感情や思考に対して常に心を開き,関心を払い,理解を深めることによって,それらをある程度は自分の意志でコントロールすることが可能になる分,それらに振り回されてしまう危険性は少なくなると思います。欲望や感情や思考に振り回されて道を踏み外してしまわないようにするためにも,常日頃から,自分の欲望や感情や思考については,それらを無視したり,ごまかしたりすることなく,しっかりと直視し,自分自身のものとして受け止め,その本源(本質)を見極めるための努力を怠らないようにようにしたいものです。欲望や感情や思考をなくすことはできなくても,それらを自覚し,その本源を見極めることによって,それらは自分の意志でコントロールしやすいものになるというだけでなく,より穏やかで,より偏りのないものに変化していく可能性があると思います。(2021年6月14日)(4)(8)関連