「幸福なんて,そんなたいそうなもんじゃない。道の果てに燦然(さんぜん)と輝いてるもんじゃない。そこらへんに転がっているありふれたものだ。ありふれているからこそ,それは存在を主張しない。駆け抜ける者の目には映らない。/立ち止まって,愛(め)でる心を持つ者の前に穏やかにあらわれる。」(『幸福論 「しくじり」の哲学』,中田敦彦,徳間書店)
○幸せは,長年にわたって他者と競い合い続けた末にほんの一握りの勝者だけがやっと手に入れられるようなものではなく,その気になりさえすれば,いつでも誰もが手に入れられるものなのではないでしょうか。実際,心の目を曇らせさえしなければ,人生の至る所に幸せ(そのほとんどは,「小さな幸せ」,「ささやかな幸せ」などと呼ばれるものですが。)は転がっている,ということが分かるはずです。私たちは,人が羨むような社会的成功を手に入れなければ幸せにはなれないなどと教え込まれて鵜呑(うの)みにし,社会的成功に対する執着を生じさせて心の目を曇らせてしまったがゆえに,いま自分の目の前にある幸せにさえ気づけなくなってしまっているだけなのではないでしょうか。人生に隠されている(埋もれている)無限とも言える幸せに気づけるようになり,ひいては,生きていることそれ自体に幸せを感じられるようになるためにも,社会的成功を手に入れなければ幸せにはなれないなどという迷信から一日でも早く目を覚まし,曇りのない眼を取り戻したいものです。(2021年6月12日)(1)(4)(6)(8)(10)(20)関連