「現在は過去と未来との間に劃(かく)した一線である。此(こ)の線の上に生活がなくては,生活はどこにもないのである。(森鴎外)」(『座右の銘』,「座右の銘」研究会編,里文出版)
○私たちは現在にしか生きることができません。すなわち,過去(記憶)や未来(想像)にばかり心を奪われている人間は,生きることをないがしろにしているのであり,当然のことながら,生きることをないがしろにしている人間が,自分の人生に生きる喜びや幸せを見いだせるはずがありません。自分の人生に生きる喜びや幸せを見いだせるようになるためには,心を込めて精一杯今を生き,今を楽しみ,細部に至るまで丁寧に今を味わい尽くすということが欠かせないからです。もちろん,より善い人生を送る上において,過去の反省を踏まえて,あるいは,将来を見越して現在やるべきことに最善を尽くすということは重要なことですが,後悔や取り越し苦労ばかりして心ここに在らずという状態になり,現在やるべきことに手が付かなくなってしまうというのでは,本末転倒です。実り多い幸せな人生を送るためにも,現在を決しておそろかにすることなく,今この瞬間にこそ関心を払い,注意を集中し,力を注げるようになりたいものです。(2020年12月26日)(8)関連