「他人の悪口を言ったり,君のことを褒(ほ)めたりする人の話は,聞かないほうがいい。」(『文読む月日(上)』,トルストイ,北御門二郎訳,筑摩書房)
◯人間は誰もが長所と短所を持っています。例外はありません。他者の短所を平気で指摘し,悪口を言えるということは,自分の短所が見えていないということを示しているのではないでしょうか。だとしたら,そのような心の目が曇った,あるがままの現実や真実を見ることのできない人間の言葉に耳を傾ける値打ちはないと思います。また,褒められれば嬉(うれ)しくなるのが人情です。しかし,褒められることが多くなれば,貶(けな)されることも多くなるのがこの世の常ですし,褒められて調子に乗れば,後で必ず痛い目を見ることになります。慢心し,独り善がりになることを避けるためにも,褒め言葉を鵜呑(うの)みにすることなく,自分の耳が痛くなるような言葉にこそ耳を貸すのが賢明なのではないでしょうか。(2020年8月23日)(12)(14)(17)関連