「己れの罪を意識することほど心を柔軟にするものはなく,いつも自分は正しいと思いたがることほど,心を頑(かたく)なにするものはない。(『タルムード』)」(『文読む月日(上)』,トルストイ,北御門二郎訳,筑摩書房)
◯私たちは,誰もが間違いを犯す可能性を有しています。一人の例外もありません。その自覚を強く持つことこそが,私たちを慎み深くさせ,「罪を憎んで人を憎まず」という寛容さにもつながっていくのだと思います。吉野弘の「祝婚歌」に,「正しいことを言うときは/少しひかえめにするほうがいい」というフレーズがありますが,自分のことは棚に上げたまま正義を振りかざして他者を声高に責め立てるような人間を少しでも減らし,社会をより寛容で住みやすい場所にしていくためには,私たち全員が,自分が間違いを犯す可能性があることを常に自覚している必要があるのではないでしょうか。(2020年5月13日)